「不貞行為」などという言葉、日常的に使いますか?普通に生活していると、使う機会がない言葉です。そもそも、読み方さえ、はっきりわからない方もいるかもしれませんし、不貞って、なんか時代がかった言葉ですよね?
日常的には、まず使わない言葉ですが、法律的には、よく使います。例えば、浮気が原因で、離婚請求するときには、必ず登場する言葉です。
不貞行為のABCをご説明しますから、この記事でしっかり、理論武装してください。
不貞行為って何?
「不貞行為」の基本の基本を説明します。
言葉の読み方、意味
「不貞行為」は、「ふていこうい」と読みます。不貞とは、現在、日常の会話ではまず出てこない言葉ですが、貞操(ていそう)を守らないと言う意味になります。またまた、時代がかった「貞操」などと言う言葉が出てきました。
辞書によりますと、貞操とは、夫婦・恋人同士でお互い、性的純潔を守ることとありますから、不貞とは、その逆の夫婦・恋人間で性的純潔を守らないことです。だいたいのイメージはつかめましたか?
法律上の定義
不貞行為とは、法律用語です。民法770条に離婚事由の一つとして規定されています。
つまり、法律的に不貞行為とは、配偶者としての貞操義務の不履行を意味します。もし、不貞行為を行えば、それを理由に離婚できると明記されています。
「配偶者としての貞操義務の不履行」とは、かみ砕いて説明すると、「夫婦や婚約している恋人、内縁関係の男女の一方が、パートナー以外の異性と、自由意思で肉体関係を持つこと」になります。
不貞行為と、浮気・不倫は違うの?
浮気、不倫って言葉は、日常的に使いますが、不貞行為とはどう違うのかについて、説明します。
浮気・不倫とは?
「浮気」とは、もともとは、読んで字のごとく、「心が浮つくこと」と言う意味でしたが、今では、主に男女間、特に夫婦間の愛情が浮つくこと、つまり配偶者や恋人がいるにもかかわらず、他の異性に気がひかれ、関係を持つことをいいます。
一方、「不倫」とは、倫理という言葉があるように、倫とは、人の守るべき道のことで、不倫とは、人が守らなければならない道を外れることです。ただ、現在では、婚姻制度から外れた男女関係を指すことが多いです。結婚をしていないカップルの場合、パートナー以外と性的、肉体関係を持っても、不倫とは言いません。
不貞行為と決定的に違う点
浮気・不倫と不貞行為と言う言葉の決定的な違いは、不貞行為が法律用語であるという点です。不貞行為とは、配偶者を持つ人が、配偶者以外の異性と性的、肉体関係を持つことを言います。民法で規定された言葉で、離婚裁判などで、裁判所が判決の中で使います。
ただし、婚姻関係にない内縁関係の場合でも、不貞行為は、慰謝料や損害賠償の請求になる場合もあります。
どこからが不貞行為とみなされるのか?
前項では、不貞行為とは、配偶者以外との性的、肉体関係のことだと説明しましたが、不貞行為とみなされる場合、みなされない場合の線引きをしましょう。
不貞行為とみなされること
不貞行為とは、配偶者以外の異性と性的、肉体関係を持つことで、同棲している、ラブホに長時間二人で入って出てこない場合なども、不貞行為とみなされます。肉体関係とは、性交渉だけを言うのではなく、それに準ずる行為(オーラルセックスなど)も含まれます。
また、肉体関係の有無にかかわらず、夫婦生活を破綻させるような行為は、不貞行為とみなされることもあります。
不貞行為にならないこと
- 配偶者以外の異性と、頻繁にメールなどで、「愛してる」「君を抱きたい」などと、やり取りする
メールのやり取りのほか、映画を見に行くなどのデートやドライブ、別れ際のキスやハグは、される方にすると、浮気・不倫ですが、法律的には、不貞行為とはなりません。
- 風俗嬢との一度だけの関係
風俗嬢との性交渉は、一度でも持つと、やはりされる方には、浮気になりますが、法律的には、一度だけでは、離婚事由になる不貞行為とはみなされません。
ただし、風俗通いがおさまらず、何度もする場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として、離婚請求できる場合もあります。
- 別居中、家庭内別居中の不貞行為
別居、あるいは家庭内別居で、客観的に夫婦関係が破綻している場合、配偶者以外の異性との性行為は、不貞行為を理由に離婚、慰謝料請求ができない傾向にあります。
- 強姦された場合
意思に反して、強姦された場合は、不貞行為にはあたりません。
グレーゾーン
- 1回だけの不貞行為や風俗
もし、お酒の勢いでの1回だけの配偶者以外との肉体関係でも、不貞行為に当たりますが、離婚理由として認められることは少ないです。継続的に不貞行為が続いている必要があります。ただ、その1回だけの不貞行為によって、婚姻関係に大きなダメージを与え、婚姻関係が破綻したと考えられる場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」になる可能性もあります。
- しつこく迫られて断れ切れなかった
- 配偶者が不貞行為をしているから、腹いせに自分も不貞行為をした
以上のような場合は、不貞行為とみなされやすいので、ご注意ください。
不貞行為を理由とした離婚請求
不貞行為が明らかな場合は、それによって離婚請求が認められます。不貞行為とは、民法で定められた離婚事由です。
不貞行為を理由に離婚請求するためには、証拠が重要!
まず、離婚するには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。ほとんどの場合、協議離婚で解決できます。
いずれの方法であれ、配偶者の不貞行為が証明できる証拠があれば、離婚請求が認められます。また、配偶者の不貞行為によって、夫婦生活を破綻させられて、精神的苦痛をこうむったわけですから、配偶者や不倫相手に損害賠償請求を起こせます。
では、不貞行為の事実を証明するための証拠にはどんなものが必要でしょうか?
- 不貞行為を示す画像、写真
- 録音データ
- クレジッドカード明細、レシート
- メールやLINE、手紙
- SNSやブログ
- 探偵事務所や興信所の報告書
上記のようなものが有効な証拠として認められますが、不法に集めたもの(盗聴、盗撮など)や改ざんしたものは証拠として認められません。
不貞行為をした人からは離婚請求ができない!
不貞行為によって、結婚を破綻させた側を有責配偶者と言います。離婚の責任がある配偶者という意味ですね。
不貞行為を行った有責配偶者からの離婚請求で、裁判離婚が認められるためのハードルはすごく高いです。たしかに、不倫をした側が、離婚して、不倫相手と結婚したいなんて、あまりにも身勝手ですよね。ただ、状況によっては、まったく認められないことはないと言えます。しかし、基本的には認められないと考えておいていいでしょう。
理由が不貞行為にならない場合
不貞行為とみなされないことでも書きましたが、「一度だけの不貞行為」「風俗嬢との一度だけの不貞行為」「別居中の不貞行為」などは、不貞行為を事由とした離婚請求が認められないことが多いですが、その場合も、それらの行為によって、婚姻関係を継続するのが難しい場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として、離婚請求が認められます。
不貞行為の時効に注意!
民法724条には、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と明記されています。
えっ?時効は3年?20年?どっち?
不倫相手への慰謝料は、不倫があった事実を知り、不倫相手が特定できていれば、それを知った日から3年で時効となります。
一方、不倫をしているが、相手がだれかわからない場合には、時効は進行しません。ただし、相手がわからないままでも、20年を経過すれば、不倫そのものが時効となります。しかし、考えようによっては、20年前の知らなかった不貞行為も、後々わかって証拠さえそろえることができれば、訴えることができるわけです。
まとめ
不貞行為について、さまざまな側面から解説させていただきました。法律用語は、難しい面もありますが、具体的な例を考えるとわかりやすいかもしれません。
もし、配偶者の不貞行為に悩んでいる場合は、一人で悩まず、信頼できる相談相手に相談するといいでしょう。不貞行為の証拠を集める場合も、個人ではできることに限界がありますが、プロに頼めば、きちんとできますから、無料相談などを利用するといいでしょう。